2019-03-01から1ヶ月間の記事一覧
そこで紫苑さんは、 「丹精込めたバラを折る人がいるとは…。」 嫌な世の中ですねぇと、嘆息して声に出しました。その紫苑さんの声に、庭の主はちょっと面差しを和らげると、お好きな花を持っていかれるとよいですよと、手にした花切狭を彼に見せました。紫苑…
土筆(33) 何かって、と言うと彼女はまた口ごもりました。「何かよ。」と言う彼女の震え声や膠着した顔つきが、何だか緊張した雰囲気を感じさせました。私は彼女の言う「何か」を思い付く事が出来ま...... >続きを読む お寺に出て来る、何かって何でしょう…
「さて、シルの事より初子さんの事だ。」 宇宙船の通路で、現在のミルはにこりと笑いました。彼は窓外に映る青い星を見詰めていました。その清涼な紺と青、そして動的な白のコントラストに魅せられて、落ち着いた彼は前向きに気持ちを切り替えました。彼は他…
土筆(31) 「…ちゃん、どれだけここにいたと思う?」そう思い付いた様に、私の名前を呼びながらお姉さんが聞いて来るので、私は、彼女がすぐに戻って来たのだからそのくらいの短い時間よ、と答える...... >続きを読む 今日も、まあまあのお天気です。作日…
『1人に対して集団で、何て稚拙な奴らなんだ!』 それまでの彼は、勿論、同年代のクラスメート達皆にレポートで負けたという事に劣等感を感じ、暗い気分で鬱々と滅入っていました。しかし、帰途一緒になったクラスメートの何人かが行った今の子供っぽい行為…
土筆(30) 「物事ゆっくり考え直せば、ほら分かって来ただろう。」という父から教わった言葉通りに、私は落ち着いて、落ち着いてと、繰り返し心の中で呟きます。そうして気持ちを落ち着けると、今までの...... >続きを読む 子育てにゆっくりと時間を掛けら…
土筆(29) 「勝手に1人で何処にでも行っちゃだめよ。」 お姉さん然として、私にこう注意した時の彼女の笑顔は、私より年上の彼女は私より何でも知っていて余裕があるのだ、というコンプレックスを...... >続きを読む ここ北陸でも、巷には土筆が生えそろ…
私の本の配本店舗のお知らせです。 注文で取り寄せもできます。 3月末に本屋さんに届き、4月店頭に出ます。 文庫本、1冊 600円 です。 ご希望の方はご購入ください。 書名は「めいぷるしろっぷ」 著者名 さと さとみ 出版社 文芸社 です。 追記 文庫本なの…
「落ちこぼれ、落ちこぼれ。」 宇宙船の通路を1人歩きながら、ミルは自分の過去に起こった嫌な出来事を思い出していました。それは彼が集団での初等教育を受け始めた頃の事でした。 それまでの彼は、研究者の両親に伴い、あちらこちらの両親の研究対象の星を…
土筆(27) ここで、この兄妹の事情がさっぱり分からない私は、「あの人って、…。」と彼女の兄の名を挙げてみました。薄々「あの人」は彼女の兄さんの事なのだろうと感付いていましたが、それでも私は確...... >続きを読む 親子間、兄弟間、1つの家庭でも…
その後和やかに歓談し、ひと休みした2人は船内の見学に戻りました。2、3施設を巡った後、2人は自由研究室へもやって来ました。 ミルは思い出したように地球人男性から借りたこの星の専門書の話を始めました。 「かなり初歩の学問書だからって、これが案外…
土筆(26) 「土筆?ここに?」彼女は私の言葉を訝って、すぐ真下、私が眺めていたその場の地面を眺めると、再び「土筆が?この下の場所に生えるって?あの人が?そう言ったの…。」と言った切、絶句...... >続きを読む 特に書く事が無い、今日の思い出を振…
またその内に、あなたの気に入っているその話を聞かせてもらう事にするわと、シルはにこやかにミルを言いくるめると、ミルの今迄見聞した地球の状態について聞き出すのでした。 「独自の文化や遺跡、見る者はかなり多い惑星だよ。」 ミルは機嫌良くシルの話…
土筆(24) 「分かったね。」僕の言った事が分かったかな?そう言って彼が女の子を見ると、女の子は不思議そうにきょとんとしています。目を瞬いて、半信半疑らしい顔をして考え込んでみる気配です。...... >続きを読む まだまだ井の中の蛙、にさえもなって…
何処の宇宙船に着任しようと、シル達感応者は大の人気者でした。何故なら彼等感応者達は宇宙船にとって必要不可欠の人材になるからでした。シル達自身にすると、よいように使いまわされている、実際そんな風に感じる事がまま有るのです。他の乗組員に対して…
土筆(23) 「今皆がいた此処にも土筆は有るけど、」そう言って自分達のいる場所の向こう側、大きな施設の渡り廊下の下、軒先の様になっている下の地面がむき出しになった空間を指差すと、あそこにも土筆...... >続きを読む 春は土筆ですね。春の風物詩です…
2人はにこやかに艦内を歩いていました。 「へぇ~、僕の故郷の星の近くの星団出身なんだね。」 「ええ、本とに、ご近所同士だから宜しくね。」 そんな会話を、宇宙船内を案内するミルと、新任の感応者で女性士官のシルは交わしながら和やかな雰囲気で船内施…
土筆(21) 再び「あそこの家は辞めたんだよ。」という少しいらだった声が上がりました。今回は「僕も聞いた。そうだって、家業を閉じたんだって。」と淡々とした声で同調する者も現れました。「知らない...... >続きを読む 閉じたんだよ、という言葉の分か…
「分かりました。」 自由時間だっていうのに、特殊任務の話なんか持ち出して…。ミルは内心ムッとするのでした。そんな彼の内面の感情を彼の表情から読み取りながら、副長チルは無言でその場を立ち去って行きました。 やれやれ、何であいつはあんなに凝り性な…
土筆(20) さぁ、と、知らない子が言えば、どこそこの誰だという者もいて、聞いた指導者の子はやや驚いて、真面目な顔をして考え込んでみるのでした。「ああいう家の子は、小さくでも大丈夫な場合がある...... >続きを読む 子供って面白いですよね、分かっ…
「そんなに気を使う事は無いんじゃないか。」 副長のチルの言葉に、下士官のミルは、そうはいってもと不服そうに言葉を返しました。 ここは宇宙船の自由研究室。宇宙船の全ての乗組員がその勤務の空き時間に、思い思いの研究が自由に出来るようになっている…
そんな風に紫苑さんが去って行く後姿を、街路樹の欅の影からそっと覗いて見ている1人の人物がいました。それは彼を見守る鷹夫ことミルでした。 やっぱりねと彼は思います。彼は紫苑さんが必ず自分の身上調査をするだろう事や、彼の設定している大学にまで確…
土筆(18) 程無くして遠くで小競り合いをするような子供の声が聞こえて来ました。皆の所からは見えなくなった施設の建物の向こう側の場所のようです。場所が遠いせいか耳を澄ませても話の内容が私にはよ...... >続きを読む うらうらとした良いお天気です。
そんな初期の頃の出会いから、以降、2人は図書館で顔を合わせる度に親しさを増していくのでした。用心深い紫苑さんはその年の4月に入ると、早速、ミルが入学した筈の、院のある大学へと赴きました。彼は大学の受付窓口で学生の知人だと名乗り、鷹夫という名…
土筆(17) 消えてしまったその子達の一部始終の様子を見ていた私は、内心『ああするのだ。』と呟きました。嫌な場所からはああやって組になり、一気にその場所から遠ざかり、あの様に言って走り去ってし...... >続きを読む 今も昔も要領のいい子や、機敏な…
勿論、この紫苑さんの名前についての偽りは、先に紫苑さんが判断したように何れバレるのでした。一般の地球人ではないミルの場合は尚更でした。自分の目に映る紫苑さんの光、彼の体の周囲を彩るオーラの色の変化ですぐに分かったのでした。 『やれやれ』 ミ…
土筆(15) その年の春、4月の事だと思います。完全に気候が良くなり、外套が要らなくなった私は身軽な服装になっていました。世間では日増しに暖かさと活気が増していた頃です。私達は何時もの沢山土筆...... >続きを読む 今年は暖かく過ぎそうです。良か…
本当にこの星の住人は感情が複雑だなぁ。目の前の地球人の年嵩の男性、その彼の目まぐるしいオーラの色の変化に、鷹夫こと異星人のミルは思わず溜め息を吐いてしまいます。 「如何したのかね?」 興味深い目と笑顔を顔に湛えて、尋ねて来た地球人の男性に「…
土筆(14) 後輩達と一緒にいる見知らない新しい年少の子供達の手前、大抵の先輩達は恥ずかしさからでしょう、見知った子の傍によるとぽそぽそと小声になります。それは、知らない子供達、自分がかつて指...... >続きを読む 今日はこちらのアップが後になっ…
その若者が鷹夫という名前であるという事を知り、今年の春4月からはこの地域の最優秀大学の大学院の院生となるという事を、紫苑さんが知るまでにそう時間はかかりませんでした。何しろこの若者は、屈託なく紫苑さんの質問にすらすらと答えてくれたからでした…